区分教員向け・詳細解説(教科別ディープダイブ) 情報基準日2026.08.04(会議後修正版を反映)
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教科別ディープダイブ ── 情報・技術ワーキンググループ

情報・技術科(仮称)新設の
すべて

今回の学習指導要領改訂で、教科の「枠組みそのもの」が変わる数少ない例がここです。技術・家庭科(技術分野)が独立して中学校に新教科が生まれ、小学校・高校も含めた12年間の情報教育の作り直しが進んでいます。全体まとめページの4.12を、現場の判断に必要な情報まで掘り下げました。

この教科の状態他教科と違う点
情報・技術WG「取りまとめ(案)」大筋了承(第12回・2026.07.30、文言修正は主査一任) 他の11教科・領域の取りまとめ案には登場しない、この教科・領域固有の段階的先行実施スケジュールが明記されている

1.結論:先行実施は「ある」

Q. 情報・技術科に先行実施はある?

A. あります。令和10年度(2028年度)から小学校、令和11年度(2029年度)から中学校で段階的に先行実施する方向で検討中です

全面実施(小学校令和12年度(2030年度)・中学校令和13年度(2031年度))を待たず、令和10年度(2028年度)以降に「部分的な指導」から始められるよう経過措置を講じる方針が、情報・技術WG取りまとめ案の第7章「条件整備のあり方」に明記されています。義務教育の授業時数を柔軟化する「調整授業時数制度」自体も、小・中学校ともに令和10年度(2028年度)から先行実施される予定です。

理由も資料に明記されています。「新教科・領域は、全面実施となる小学校令和12年度(2030年度)、中学校令和13年度(2031年度)からの実施となると、社会変化が先行する中にあって、必要となる資質・能力の育成に遅れが生じ得る」——つまり、AI・情報技術の進化が速すぎて、指導要領の通常サイクル(答申→告示→周知→全面実施)を律儀に待っていたら、生徒が学ぶ内容が現実に追いつかなくなる、という危機感が先行実施を後押ししています。

ただし経過措置の具体的な中身(何年生からどこまで教えるか等)はまだ「今後、国において精査」段階で、詳細は確定していません。

※検証方法:公表資料13本すべての本文を「先行実施」で全文検索した結果、この語が登場するのは情報・技術WG資料と総則・評価特別部会資料の2本のみ(残り11教科の取りまとめ案には一度も登場しません)。ただし総則・評価特別部会側の記述も内容を確認すると、指している対象は情報・技術と同じ「新教科・領域」の話でした。なお、先行実施に類する仕組みは他にも存在します——①「調整授業時数制度」自体が小・中学校ともに2028年度から先行実施される予定(これは特定の教科ではなく学校の時間割の仕組み全体の話)、②高校では単位制の柔軟化を試す「高校版サキドリ研究校」を2028年度から指定予定(こちらは学校が任意で参加する研究校制度で、全国一律の先行実施スケジュールとは別物)。「教科・領域の中身が段階的に先行実施される」という意味での固有スケジュールを持つのは、確認した範囲では情報・技術だけです。

2.なぜこの教科だけ特別扱いなのか

他の11教科は「今ある教科の中身を改善する」話ですが、情報・技術は「教科の設計図そのものを引き直す」話です。規模が違います。

  • 技術・家庭科(技術分野)が独立し、独自の教科になる大きな変化。生成AI・プログラミング・情報セキュリティを大幅拡充した「情報・技術科」(仮称)になります。なお現行の技術・家庭科(技術科)は1958年告示・1962年度実施で誕生した教科で、当時から数えると60年以上の歴史があります
  • 小・中・高の12年間を一体で設計し直している。小学校「情報の領域」→中学校「情報・技術科」→高校「情報科」と、初めて情報教育が校種を貫く体系として整理されました
  • 他教科からの「移管」を受ける側。国語のタイピング、算数・理科のプログラミング、社会の産業と情報、美術の映像メディア、保健体育の健康と情報機器——バラバラに扱われてきた内容がここに集約されます
  • 指導体制の危機が資料に明記されている。技術・家庭科(技術分野)の免許外教科担任は1,863名、臨時免許所有者は543名(いずれも令和7年度(2025年度)時点)。「十分に指導体制が整備されていない危機的な課題」と、WG自身の言葉で書かれています

3.審議の経緯(全12回)

令和7年(2025年)9月〜令和8年(2026年)7月の約10か月、月1回ペースで積み上げられた議論です。日程は文部科学省の公式開催状況一覧ページで確認済み(全12回の日付は一致)。議題欄は各回の開催案内・配付資料に基づく要約です。

日程主な議題
第1回2025.09.25情報・技術に関する現状・課題と検討事項
第2回2025.10.20情報活用能力の体系性について
第3回2025.11.10小学校における情報活用能力の育成(生活・総合WGと合同開催)
第4回2025.12.08情報活用能力の抜本的向上が目指す姿/目標と見方・考え方
第5回2026.01.09メディアリテラシーについてヒアリング/高次の資質・能力等
第6回2026.02.13メディアリテラシー・AIに関する現状と検討課題
第7回2026.03.09個別の内容等/デジタル学習基盤を前提とした深い学びの方策
第8回2026.04.16個別の内容等/柔軟な教育課程の工夫等
第9回2026.05.18学習評価の在り方/プログラミング教育/体系整理
第10回2026.06.08体系整理(続き)/内容の精選の考え方
第11回2026.06.25体系整理(続き)/取りまとめに向けた検討
第12回2026.07.30情報・技術WG取りまとめ(案) — 大筋了承

4.3段階の全体像

小学校は独立教科にせず既存の時間に「領域」を追加、中学校で初めて独立教科に、高校は既存科目を維持しつつ中身を刷新——という段階設計です。

「情報の領域」

総合的な学習の時間に付加。独立教科は作らず、「探究の領域」と2領域構成に。ミニ探究ユニット+情報ブロックで学ぶ

「情報・技術科」(仮称)

技術・家庭科(技術分野)を発展させた新教科。情報技術領域+情報を基盤とした生産技術領域の2領域4項目

「情報科」(情報Ⅰ・Ⅱ)

科目名・共通必履修の枠組みは維持。情報Ⅱに「AI」独立項目、単位数を柔軟配当可能に

目標は「高校卒業生全員に、数理・データサイエンス・AIを『日常の生活や仕事等の場で使いこなす』リテラシーレベルの学びを保障する」こと。現行の到達目標(大学・高専卒業生が対象)から、対象を高校卒業生全員に広げるのが最大の方針転換です。

5.「情報・技術科」の中身

2領域・4つの内容項目(すべて仮称)

領域内容項目中身
情報技術領域情報の表現とデジタル化情報技術の基礎理解の入口
プログラミングと自動化プログラミング的思考を「AIへの指示・生成物の検証」まで拡張
情報基盤とシステム化ネットワーク・情報セキュリティ
情報を基盤とした生産技術領域材料加工とデジタル製作現行A「材料と加工の技術」+デジタル製作
生物育成とデータ活用現行B「生物育成の技術」+データ活用
エネルギー変換とスマート化現行C「エネルギー変換の技術」+スマート化
技術の統合(新設)フィジカルAI・複数技術を横断的・統合的に扱う新項目。3Dプリンタ・センシング・シミュレータの活用を強化

「情報技術」領域と「情報を基盤とした生産技術」領域を掛け合わせ、デジタル技術を活用して新たな価値を構想する力と、実生活・実社会を支える仕組みを作る力の両方を育てる構成です。名称は「情報技術科」ではなく「情報・技術科」——情報技術だけでなく生産技術を含む多様な技術を一体的に学び、それらを横断した課題解決を実践する教科であることを示すため、とWG資料で明言されています。

6.「情報科」の中身

情報Ⅰは「維持」、情報Ⅱは「柔軟化」

科目の統廃合はしません。理由が明確に書かれています——「情報Ⅰが共通必履修科目となったのは前回改訂時であること、大学入学共通テストに追加されたのが令和7年度(2025年度)であることから、安易な科目構成の変更は現場の混乱を招く」。共通テストに入ったばかりの科目を今また作り直すのは現場が耐えられない、という現実的な判断です。

科目扱い内容項目(すべて仮称)
情報Ⅰ
共通必履修・存置
5項目に再構成情報の仕組みと社会との関わり/情報デザインとデザイン思考/データ分析とモデル化・シミュレーション/アルゴリズムとシステム開発/PBLによる課題解決の実践(新設)
情報Ⅱ
選択・単位数を柔軟配当
5項目に再編社会課題とデータサイエンス/コンテンツデザイン/AI(独立項目として新設)/先端技術と情報システムデザイン/PBLによる価値創造の実践(新設)

単位制の柔軟化で「組み替え科目」も検討中

  • 情報Ⅰ・Ⅱを一体化した科目:情報技術の理解から活用・課題解決・価値創造までを一体的に学ぶ構造に再構成し、探究的な学びを充実
  • 情報Ⅰと数学Ⅰの一部を一体化した科目:高等教育の数理・データサイエンス・AI教育への接続を見据え、数学Ⅰ・情報Ⅰで学んだ統計・データ活用を基に課題解決へつなげる

高校卒業までに全生徒が「リテラシーレベル」(数理・データサイエンス・AIを日常生活や仕事の場で使いこなす水準)に到達することを目指し、学校によっては「応用基礎レベル」まで学べるようにする方向も検討されています。

7.「情報の領域」の中身

小学校は独立教科を新設せず、既存の「総合的な学習の時間」に「情報の領域」を付加する形です。総合を「探究の領域」と「情報の領域」の2領域構成に整理し直します。

  • ミニ探究ユニット:一定のまとまりをもち、探究的な学びのプロセスの中で情報技術を実際に活用する小単元。探究における情報技術活用の意義や効果を実感しながら学ぶ
  • 情報ブロック:探究のプロセスに位置付けにくい、情報に関する基礎的な内容を学ぶための独立したまとまり

小学校段階では「①活用」を中心に体験的な学習活動を重視しつつ、「②適切な取扱い」「③特性の理解」の基礎も着実に育てる方針です。

8.時数はどう作る?

総授業時数を増やさない前提のため、「情報・技術科」の時間は既存教科の内容精選と柔軟な教育課程の仕組みで捻出します。

  • 調整授業時数制度の活用:数学から「データ」に関わる内容を情報・技術科側に上乗せするなど、既存教科との連携で時数を確保する例が示されています
  • 総合的な学習の時間や情報・技術科で創出した価値を、個々の興味・関心の高まりを踏まえて「情報活用能力を重点的に育成する時間」として探究課題に深化させる工夫例も
  • 情報科でも単位制の柔軟化(標準単位数の細分化・必履修を含む複数科目の統合組み替え・単位数の柔軟配当)を活用。ただし必履修「教科」に係る科目の履修単位数の合計が3新単位以下となる減単は不可、という下限は維持されます

具体的な時数はまだ示されていない

WG資料には「学習活動を最小単位で試行的に積み上げた」参考値のみが載っています(小3=28項目程度、小4=27項目程度、小5=31項目程度、小6=30項目程度、中1=65項目程度、中2=66項目程度、中3=32項目程度)。ただし1項目=1コマとは限らず(複数コマ要する項目もある)、正式な授業時数は教育課程全体の観点から今後総合的に検討される、と明記されています。

9.先行実施のスケジュール詳細

2026夏頃教育課程部会の「審議まとめ」→パブリックコメントイマココ
2026年度冬頃中央教育審議会が答申
2026年度末学習指導要領の改訂告示(2027年3月頃の見込み)
令和10年度(2028年度)〜小学校で先行実施が始まる想定。調整授業時数制度も小・中学校ともに令和10年度(2028年度)から先行実施予定先行
令和11年度(2029年度)〜中学校で先行実施が始まる想定。小学校からの先行学年が中学へ進む際の円滑な接続を図る狙い先行
令和12年度(2030年度)小学校 全面実施
令和13年度(2031年度)中学校 全面実施

経過措置を検討する理由として資料が挙げる注意点は2つ。①小学校と中学校で全面実施の時期がずれるため、先行して取り組むことで中学への円滑な接続を図れること。②中学校が令和10年度(2028年度)から先行実施した場合でも、その学年の生徒が高校に進学する時点では、高校はまだ現行の学習指導要領下にあること——つまり「先行実施した生徒が上の学校段階でどう扱われるか」の接続設計もセットで検討中です。

なお、調整授業時数制度そのものは新教科・領域の趣旨に基づいて教育課程を編成しようとする学校による同制度の活用を妨げるものではなく、各学校の実態に応じて先行的な取組が進められることも期待される、とも書かれています。制度上「待たなければいけない」わけではなさそうです。

※前例:現行学習指導要領での外国語科創設(小5・6)の経過措置では、全面実施までの2年間(平成30・令和元年度=2018・2019年度)に小学校3年生以上で外国語活動の時数を先行して追加した実績があります。今回もこれに類する段階的な移行が検討される見込みです。

10.学校現場が今考えておくべきこと

WG資料の第7章「条件整備のあり方」は、審議のまとめには珍しく「現場の危機的な現状」まで数字入りで書かれています。

指導体制の現在地(令和7年度(2025年度)時点)

1,863
中学校 技術・家庭科(技術分野)
免許外教科担任
543
同・臨時免許所有者
47
高校 情報科
臨時免許所有者
97
同・免許外教科担任

WG資料はこの状態を「十分に指導体制が整備されていない危機的な課題」と表現し、「改善を一層加速させる必要がある」と明記。目標は令和10年度(2028年度)までに臨時免許・免許外担任をゼロにすることです(「情報活用能力の抜本的向上を支える指導体制改善プラン」令和8年(2026年)7月30日時点で公表済み・今後も随時改訂)。

国が示している条件整備の項目

  • [01]

    授業動画・教材の整備

    教師がそのまま活用できる授業動画を含む学習者用教材を国が開発。公表のおおよその時期を十分な時間的余裕をもって現場に伝え、事前視聴の時間も確保する方針が明記されています

  • [02]

    免許取得のオンライン化

    教員が負担なく免許を取得できる環境を整えるため、オンラインかつ全国規模の免許法認定講習の実施等を推進

  • [03]

    指導力向上研修

    全ての小・中・高校担当教員を対象にした大規模な研修の展開

  • [04]

    設備・環境整備

    3Dプリンター等を含む学習環境の整備策、いわゆるPC教室の環境維持に向けた財政措置の整理

  • [05]

    指導体制の工夫

    特定期間での情報・技術科の集中実施と組み合わせた複数校指導・遠隔授業の実証、成果の横展開

  • [06]

    免許制度そのものの検討

    免許制度の在り方の検討などについて、各自治体・学校のキャパシティを確保しながら抜本的かつ集中的に推進

先生個人として意識しておきたいこと

  • 技術・家庭科(技術分野)や情報科を担当している・担当する可能性がある先生は、免許法認定講習のオンライン化の動きを注視。免許外・臨時免許での担当が今後解消される方向にあるため、早めの情報収集が有利
  • 国の授業動画は「少なくとも年1回のアップデート」が前提とされている=一度作ったら終わりの教材ではないことを踏まえ、単発の研修より継続的なキャッチアップの体制を意識しておく
  • 令和10年度(2028年度)からの先行実施は「小学校から」始まる想定。小学校の総合的な学習の時間を担当する先生ほど動きが早い
  • 技術・家庭科の教員は、家庭分野が技術分野の分離を前提に再設計されている点にも注意(4.8 家庭の項目も参照)

11.評価はどう変わる

  • 情報・技術科:すべての内容項目で「技術の学習過程の考え方」に基づいた学習活動を行う前提。「技術の統合」を新設し、情報や技術を活用してものを生み出すプロセスを重視することから、評価も課題解決の過程や取組の様子を重視。1人1台端末を活用して問題解決の過程を記録・共有し、ルーブリックで作品や発表の到達度を分かりやすく示す
  • 情報科:情報Ⅰに新設「PBLによる課題解決の実践」、情報Ⅱに新設「PBLによる価値創造の実践」を通じて、探究的・実践的な学習の中での課題解決・価値創造の過程を重視した評価。一人一人が異なる課題に取り組む実習の過程を適切に見取るため、評価の観点をあらかじめ生徒と共有することも重要とされています
  • デジタル学習基盤の活用は2つの観点で整理:①学習過程を充実する手段として(3DCADで試行錯誤の回数を増やす等)、②学習の対象として情報技術の特性自体を学ぶこと、の両方が必要

総則・評価特別部会が進める評価改革(「主体的に学習に取り組む態度」評価の見直し・「学びに向かう力」の個人内評価化)は情報・技術科にも及びますが、具体的な適用は今後の検討課題とされています。詳しくはまとめページ2章を参照してください。

12.出典

このページは情報・技術WG「取りまとめ(案)」(第12回・2026年7月30日配付、全100ページ超)と、その後2026年8月4日に公開された「会議後修正」版(内容は本文・条件整備・スケジュール等いずれも実質変更なしと確認済み)を精読して作成しました。

正本(会議後修正版)情報・技術WG取りまとめ(案)※会議後修正(PDF・文部科学省・2026.08.04)

会議一覧教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ(文部科学省)

開催状況一覧全12回の開催日一覧(3章の日程はここで確認)

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